ノーコードで美しいWebサイトを制作できる「Studio」は、デザイナーを中心に人気のあるツールです。しかし、その一方で「StudioはSEOに弱い」と言われることも少なくありません。本記事では、なぜそのように言われるのかを検証し、どのような点に注意すべきかを明らかにします。
Studio.Designとは何か
Studioは、日本発のノーコードWebサイト制作ツールで、誰でも直感的に高品質なデザインのサイトを構築できるのが特徴です。コード不要で視覚的に編集できるため、特にデザイナーや小規模事業者に支持されています。
なぜ「SEOに弱い」と言われるのか
多くのユーザーが「StudioはSEOに弱い」と感じる背景には、いくつかの具体的な理由があります。技術的な制約や仕様上の問題点を中心に、その理由をひも解いていきます。
特に注目すべきなのは、StudioがSPA（シングルページアプリケーション）で構築されている点です。SPAは、ページの表示にJavaScriptを多用するため、検索エンジンのクローラーがコンテンツを正しく読み取れないケースが発生します。このことが、SEOにとって大きな障壁となることがあります。
ただし、「JavaScriptは検索エンジンに読み取られない」というのは過去の常識であり、現在ではGoogleなどの主要な検索エンジンはJavaScriptをある程度レンダリングしてコンテンツを評価できるようになっています。とはいえ、JavaScriptの実行には通常よりも時間がかかるため、インデックスの遅延や不完全なクロールが起こる可能性は依然としてあります。
SEOの観点から見たStudioの課題
実際にSEO対策を行う上で、Studioではどのような課題があるのでしょうか。ここでは、SPAの構造とは別の観点から、StudioのSEOにおける具体的な課題を洗い出します。
メタ情報の柔軟性の不足
ページごとにタイトルタグやメタディスクリプションを自由に設定できる点は柔軟性とも言えますが、逆に一貫性を保つことが難しくなるという課題もあります。たとえば、「ページ名 – サイト名」のような統一された構造を維持する場合、すべてのページでそれを手動で入力する必要があるため、人為的なミスにより「サイト名」が漏れてしまうなどの問題が起こる可能性があります。このような設定ミスは、検索結果における認知性やブランドの一貫性に悪影響を及ぼすおそれがあります。
構造化データの設定の自由度
構造化データ（リッチリザルトを狙うためのマークアップ）の埋め込みに対して、Studioは柔軟性が高いとは言えず、カスタマイズには限界があります。ページごとに構造化データを記述することは可能ですが、その設定は自由記述形式となっており、あらかじめテンプレートが用意されているわけではありません。そのため、どのようなプロパティをどう書けばよいのかが初心者には分かりにくく、結果的に活用が不十分になるケースが多く見られます。これにより、検索結果での視認性向上が難しくなります。
画像のalt属性の自動化や編集性
画像SEOの観点からは、alt属性の適切な設定が重要です。Studioではalt属性の設定ができるものの、大量の画像を扱う場合に効率的に管理・最適化する手段は限られています。また、Studioでアップロードされた画像は通常、Google Cloud Storage（storage.googleapis.com）にホストされており、自身のドメイン配下に属さないURLになります。このことがSEOへの影響を直接与えるとは限りませんが、外部ドメインに画像があるという点で一貫したブランディングや資産管理の面ではやや不利に働く可能性があります。
URL設計の自由度
URLの構造がシンプルでフラットになりがちで、階層的なURL設計がしづらい場合があります。これはサイト構造を明確に伝えたい場合には不利に働くことがあります。リダイレクトやcanonicalタグの柔軟な設定が難しいと、重複コンテンツの問題やSEO効果の分散につながる恐れがあります。
CMS構造
StudioではCMS（コンテンツ管理システム）機能も提供されていますが、SEOの観点から見るとこのCMSの活用にもいくつかの注意点があります。特に、ブログや記事コンテンツを運用する場合、以下のような課題が挙げられます。
- CMSで作成した記事にも個別にメタ情報を設定する必要があり、運用ルールを明確にしないと情報の統一性に欠ける可能性があります。
- CMS記事のURL構造が変更できないため、たとえば「/blog/」や「/posts/」といった固定パスが自動的に含まれる点が、サイト全体のURL設計方針とズレる場合があります。
- 記事一覧ページやタグページといったアーカイブ系ページに対して、noindexなどの細かいSEO制御を行いたくても設定に限界があります。
- CMSページの読み込み速度がやや遅くなる傾向があり、とくにモバイル環境においてユーザー体験を損なう可能性があります。読み込み速度はSEO評価にも影響するため、意識的な対策が求められます。
CMS機能は便利ではあるものの、WordPressなどの専用CMSに比べるとSEO的な自由度は低めであり、細かい調整を行いたいユーザーにはやや不向きな面もあると言えるでしょう。これらの点に留意しながら、Studioでのサイト構築を行うことが、SEOの観点から重要です。
Studioは本当にSEOに向かないのか？
StudioにはSEO上の制約がいくつかあるのは事実です。特に、競合の激しいビッグキーワードで上位表示を狙うには、高度なテクニカルSEOや細かい設定が求められ、Studioでは限界があります。
一方で、指名検索や「地域名＋業種」などのローカルなキーワード、競合の少ないニッチな検索ワードにおいては、Studioでも十分な成果が期待できます。中小企業や個人事業主、実店舗のように、ターゲットが明確で検索意図がはっきりしている場合には、Studioの標準的なSEO機能でも対応可能です。
また、Studioの魅力はデザイン性と操作性の高さです。短時間で洗練されたサイトを構築できるという利便性は、SEO以上に優先される場面も多くあります。
重要なのは、「誰が・何のために・どのように使うのか」。Studioの特性を理解し、適切に運用すれば、目的に応じたWebサイト運営は十分可能です。
StudioのSEOに関する課題は確かに存在しますが、それを正しく理解し工夫することで、十分に成果を出すことも可能です。自分のWebサイトの目的やターゲットに応じて、最適なツール選びをしていきましょう。
