長年、Googleタグマネージャー(GTM)での広告計測にはコンバージョンリンカーが必須と言われてきました。クリック情報をCookieに保存し、正確にコンバージョンを紐づけるためのお守りのような存在です。しかし2025年4月、GTMの仕組みが大きく変わり、Googleタグが自動でこの役割を果たすようになりました。
つまり、多くのサイトでコンバージョンリンカーをわざわざ設置する必要がなくなったのです。ただし、全てのケースで完全に不要というわけではありません。この記事では、アップデートで何が変わったのか、どんな場合にまだ必要なのかをわかりやすく整理し、これからの計測をどうシンプルにしていくべきかをお伝えします。
コンバージョンリンカーとは?
コンバージョンリンカー(Conversion Linker)とは、Google 広告などのクリック時に付与される gclid や dclid などのパラメータをブラウザのファーストパーティ Cookie に保存し、その後に発生する購入や申込などのコンバージョンと正確に紐づけるためのタグです。
2017 年の公開以来、Google タグマネージャー(GTM)で広告計測を行う際の“お守り”として、全ページで最優先に発火させることが推奨されてきました。
長年の“お守りタグ”に走った衝撃
「Google広告のコンバージョン計測を行うときは、必ずコンバージョンリンカーを最優先で発火させる」
これまで計測に携わった方なら、一度は耳にしたことがあるベストプラクティスではないでしょうか。広告クリックで付与される gclid などの情報をファーストパーティCookieに保存し、後で発生したコンバージョンと紐づける。この役割を果たすのがコンバージョンリンカーでした。
ところが2025年4月、GoogleはGTMコンテナが広告タグを発火するとき自動でGoogleタグを注入するという仕様変更を実装しました。この瞬間、「コンバージョンリンカーってもう必要ないのでは?」という疑問が世界中のマーケターを駆け巡ったのです。
アップデートで何が起きたのか
今回のアップデートでは、これまでコンバージョンリンカーが担っていたCookieの設定や計測の土台作りを、Googleタグ自体が自動で行うように仕組みが変わりました。これにより、GTMのコンテナ内にわざわざコンバージョンリンカーを入れておかなくても、広告のクリック情報(gclidなど)を自動でファーストパーティCookieに保存し、必要な計測に活用できるようになっています。
つまり、以前は「コンバージョンリンカーがCookieをセット → 広告タグがそれを読んで計測する」という二段構えでしたが、今は「GoogleタグがCookieもセットし計測もする」という形に一本化されました。これにより、タグの重複発火や順序のズレで計測が漏れるリスクが大幅に減り、運用の負担も軽くなっています。
今回のアップデートでは、従来“お守り”として欠かせなかったコンバージョンリンカーの役割を、Googleタグが肩代わりするようになりました。これにより、私たちの計測設定や運用フローがどのように変わるのか。そのポイントをわかりやすく整理していきます。
それでも残すべきケースと移行手順
「もう全部削除しても大丈夫?」という疑問に対して、結論から言えば、大半のサイトではコンバージョンリンカーを停止して問題ありません。ただし、下記のようなケースに当てはまる場合は、コンバージョンリンカーを残す、または設定を見直す必要があります。
該当ケース | 対応のめやす |
---|---|
まだGoogleタグを全ページへ設置していない | 全ページ設置が最優先。完了するまではコンバージョンリンカーを残す |
独自のクロスドメイン計測をしている | Linkerの「Auto Link Domains」機能を使い続けても可(Googleタグのauto_link_domains でも代替可) |
Consent Mode V2で同意を取得してからCookieを設定したい | GoogleタグをConsent Initializationで発火すれば原則Linker不要 |
サーバーサイドGTMのみでブラウザ側のGoogleタグを設置していない | ブラウザ側にもGoogleタグをInitializationで置くか、Linkerを残す |
今すぐできる3ステップ
- GoogleタグをInitialization – All Pagesで発火しているか確認します。
- コンバージョンリンカータグを一時停止(Pause)し、計測が落ち着くかを48時間ほどモニタリングします。
- Google広告の「診断」やTag Assistantで gclidが保持され、コンバージョンが計測されているか をチェックします。
問題がなければ、そのままコンバージョンリンカーを削除しても構いません。もし数字が落ち込むようなら、発火順序やCookie制限の影響を再確認し、必要に応じてコンバージョンリンカーを復活させてください。
過去の常識を見直し、シンプルな計測へ
今回のアップデートは、「コンバージョンリンカーは何も考えずに追加しておけばOK!」という古い常識を見直す大きなきっかけになりました。コンバージョンリンカーは、これからは“保険”ではなく“昔の遺産”と言ってもいいでしょう。Googleタグ一つで多くの役割を果たせるようになったことで、設定はシンプルになり、運用の負担も軽くなります。
ただ、その一方でGoogleタグ自体は多機能化が進み、設定や理解しておくべきポイントは以前よりも増えています。Consent ModeやサーバーサイドGTMなど新しい機能を活用するには、仕組みを正しく理解し、誤設定を防ぐことが大切です。
これを機に、GTMコンテナを一度整理して、必要なタグだけを残してみましょう。シンプルな設計こそが、これからの高度な計測の土台になります。少ないタグで最大の効果を出すために、まずは一歩ずつ見直してみてください。
この記事がお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。